久田流点前について
三ツ羽
久田流点前の特徴の一つに三ツ羽があります。男女共に久田流の点前は、茶道口で三ツ羽を膝前に礼をすることから始まります。三ツ羽を持ち入り、男子は畳一帖を四歩で歩き、女子は六歩で歩いて座ります。風炉の季節にはまず風炉釜を三ツ羽で掃き清め、次に点前畳を掃き清めます。炉の季節には炉縁、炉壇、釜蓋を三ツ羽で掃き清めてから点前畳を掃き清めます。それから、薄茶の場合は水指、薄器、茶碗、柄杓、蓋置、建水を持ち出します。
他のお流儀の方と合同でお茶会をいたしますと、「久田流はお点前に時間がかかって、お客様を捌けないから、羽は省略して下さい。」と言われてしまうことがあります。悲しいことですが、他流の方からすれば、「羽など省略して、どんどん点前を進めてくれた方がありがたい。」くらいに思われているのでしょう。しかしながら、三ツ羽には大切な意味があります。どのお流儀でも薄器(茶入)や茶杓は必ず帛紗で清め、茶筅通しをして茶碗と茶筅を清めます。久田流ではそれに加えさらに、湯の入る「釜」と茶を点てる「点前畳」を三ツ羽で清めることにより、「口に入る全てのものを清め清浄にして」から、「掃き清めた畳」で改めてお客様にお茶を一服差し上げましょうと云う「心」が三ツ羽の所作に込められているのです。
三ツ羽は一般的に炉用と風炉用に区別されていますが、久田流では右勝手用と左勝手用に区別致します。羽の右側が広いものが左勝手用、羽の左側が広いものが右勝手用となります。後に出てまいりますが、当流では右勝手、左勝手のどちらの点前も行い、三ツ羽を必ず使用いたしますのでこのような区別となります。
「炉じまい」と「風炉じまい」
「炉じまい」と「風炉じまい」も久田流点前の特徴の一つに挙げられると思います。「炉じまい」とは、拝見に出した道具を取りに戻る時にまず、「炉前に座り帛紗で炉縁を清め、次に釜蓋を帛紗で拭いてから切る所作」を言います。その後に道具の挨拶を受けます。また、「風炉じまい」とは、拝見に出した道具を取りに戻る時にまず、「風炉前に座り帛紗で小板を清め、次に釜蓋を帛紗で拭いてから切る所作」を言います。そして道具の挨拶を受けます。使い終わった道具は水屋に持ち帰り清めることが出来ますので、水屋に持ち帰れないもの(風炉釜等)を帛紗で清め清浄にしてから、お点前をしまいにする(終わりにする)と云う意味が込められている所作です。
婦人点前
婦人点前(久田流では女子点前を婦人点前と言います)は道具を丁寧に扱い、所作が女性らしく大変優雅です。例えば、女子は一帖を六歩で歩きます。水指は運び出していきなりは置かず、一度膝前に仮置してから定置いたします。また、薄器と茶碗はそれぞれ別々に運び出します。建水も片手では持たずに他方の手を添えて両手で持ち出します。点前を始める時、勝手側の袂(たもと)を帯に挟んで上げてから建水を出して礼を致します。お点前中、空いている方の手は、膝の上ではなく体の脇に添えます。棗を持つ時も、まず親指を棗にかけて包み込むように扱ってから持ちます。茶碗を茶巾で拭く時には、茶碗を手に持ったまま拭かずに下に置いて拭きます。建水へ湯や水をあける時も茶碗を片手では持たずに、他方の手を添え、あけた後は茶碗の水滴を指で切ります。これらはほんの一例ですが、優雅な動作で道具を丁寧に扱う婦人点前をご理解いただけると思います。
男子点前は一帖を四歩で歩き、薄器と茶碗を両手で運び、棗は扱わず、建水も片手で運び、茶碗は手に持ったまま茶巾で拭きますので、一般的な茶道のお点前に似ているかと思いますが、退出時の足の運び方に特徴があります。
右勝手と左勝手
久田流は右勝手を主として左右どちらの勝手の点前も致します。これは宗全の「茶は貴賤貧富の別なく金殿玉楼に茶あり 莚戸前にも茶あり 云々」(敢えて勝手の順逆を云わず右勝手も左勝手も夫々場所に応じて自由に用いるのはこれに拠る)という教えにあります。
つまり久田流では一つの点前に右勝手と左勝手の二通りの点前が存在致します。「勝手が変われば道具の位置を反転してお点前を行えば良いだけのこと」と思われるかもしれませんが、こまごまとした相違点や決まり事があり、なかなか単純なことではありません。しかし、右勝手、左勝手にかかわらず、どのお点前も理にかない、本当に順序良く、計算されて出来ているものだと感心させられます。また伝授物のほとんどの点前にそれぞれ「真」「行」「草」の点前があり、もちろん右勝手と左勝手の二通りがありますので、久田流の先生方は他流に比べて倍もしくはそれ以上の点前を学び、身に付けておられます。
「三ツ羽で掃き清める」ことに始まり、「帛紗で拭き清める」ことで終わる「点前」の久田流は、大変優雅で伝統があり、お点前の奥が深くて、学び甲斐のある、興味の尽きない流儀であると言うことが出来ます。
